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重そうな荷物

 まだ母がこの世に居てくださった頃、私はひまを見つけては、よく実家に立ち寄った。
 母がそこに居たからこそ喜々として…。
 
 ある日、
 庭に出ていた母が、私の車を見かけて、大きな袋を(中身は見えない。)重そうに下げて、ヨチヨチ歩いて来た。
  
 いつもいつも私の顔を見ると、太陽のように輝いてくださった。

 私は、急いで車から降りて荷物を取り上げた。
 そのとたん!
 腰がカクンとなった! あまりに軽かった…。
 なんと!袋の中身は落ち葉だったのだ!

 (こんな軽いものを、やっと持つほどの体力しか無くなってしまったのか!)
 
 でも、私は哀しみを隠して大笑いしてみせた。
 母も、明るく笑った。
 その後も体力の落ちてゆく母を認識しながら、私達はいつも顔を見合わせては笑った。
  
 私は、そんなひと時でも、いつも愛した。 

 私は、ただ母とそうしていられることだけで幸せだった。

  
※重そうにリューマチの老母(はは)が提げて来た荷物担えば落ち葉であった
 
 


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 「私はネ!生まれてから抱えて続いているものは、寂しさと孤独感なの!
 あなたの気付いたことに感動してますヨ!
 「内面の世界はなんてひろいのだろう!」って…。
 同感ですよ。わたしもいつもそんなふうに感じてました。
 





 
by blue-lulubul | 2008-10-31 06:10

紫色

 私にとっては、「紫色」は一寸ミステリアスに思えるのです。
 そこで、今日は色の手帖で紫色を列挙してみたいと思います。

 「紫紺・紫根」…青色から言葉ここで初めて紫というが出てくる。
 
 「紫苑色ーくすんだ青紫」…紫苑の花のような色
 
 「花色ー鮮やかな紫みの青」…縹(はなだ)色より紫みが強い。
  
 「薄花色ーくすんだ青」があり、そのひとつ濃い青色ががある。
 
★このあたりの微妙な色の変化は魅力的だ!もともと私はブルーが一番   好きな色だから、特に感じる。

 次からは、青紫から灰紫へそして赤紫への色目を並べてみる。
 
 「桔梗色ー鮮やかな青紫」…桔梗の花のような色。
 
 「紺桔梗ー鮮やかな紫みの青」…これは語尾が青になっているので、青   色に入るか?
 
 「紅桔梗ー鮮やかな青紫」…色はもう紫!
 
 「青紫ー青みがかった紫色」…基本の色名である。
 
 「藤色ーくすんだ青紫」…言葉で言うより藤の花をイメージした方が良い。

 「楝(おうち)色ーうすい青紫」…センダン(楝)の花に似た色。桔梗色とい  う説もあるという。
 
 「菖蒲色/杜若色ー青みの紫」…アヤメ(菖蒲)やショウブ(菖蒲)やカキツ   バタ(杜若)の花のような色を思えば良い。
 
 「菫色/バイオレットー青紫」…スミレ(菫)の花のような紫色。
 
 「パンジーー濃い青紫」
  
 「ラベンダーーくすんだ青みの紫」
 
 「ライラックーうすい紫」
 
 ★これらは、一般的によく知られている花なので色はすぐうかぶだろう。

 「オーキッドー薄い紫」…蘭の一種の花の色。
 
 「鳩羽色ー暗い灰紫」…鳩の羽のような色。

 「濃(こき)色ー暗い灰赤」…濃い紫色。濃い紅色を言うこともあるという。

 「二藍(ふたあい)ー暗い灰紫」…紅花で染めた上に藍を重ねて染めた色  。若年ほど藍を淡く。壮年ほど紅を淡くするので、使用者の年齢により、  各種あるという。この色も心を揺すられる。

 「薄色(うすいろ)-明るい灰紫」…薄い紫色や二藍の薄いものも言う。
 
 「江戸紫ーくすんだ青みの紫」☆江戸を象徴する色彩の一つ。京紫が赤   みの紫であるのに対して言う。
 
 「花紫ー濃い青紫「…藍色の勝った紫色。美しい紫だ!
 
 「似紫(にせむらさき)-くすんだ青みの紫」…紫に似せた色という意味。   江戸時代に流行したという。蘇芳(すおう)に明礬(みょうばん)を混ぜて  染める。

 「滅紫(けしむらさき)-暗い灰紫」…滅(けし)とは、彩度を落したという意  味である。正倉院文書にこの名があるという。この色も魅力的である。
 
 「紫ー鮮やかな紫」…本紫。基本色名である。ムラサキ草の根で染めた。
 
 「古代紫ーくすんだ紫」…くすんで渋みのある、黒みがかった紫。江戸紫   や京紫に対して、それより暗くくすんでいる紫を古代紫と称した。私は、こ  れが紫らしい紫と思っている。
  
 「京紫ーくすんだ紫」
  
 「紅紫ー赤みの紫」
 
 「モーブーうすい青みがかった紫」…合成染料で、イギリスの科学者パー   キンがキニーネを合成しようとして偶然得られたという。

 
※スイトピーのローンパープルをなでてきた風にゆっくりゆすられている





















 
by blue-lulubul | 2008-10-29 17:40

初めての自転車

 小学校3年生の時だったと思う。
 父が、私専用の自転車を買ってくれると言った。

 2つ下の弟は、男同士の仲間ですでに大人の自転車を乗り回していた。
 昔の自転車は婦人用の物が少なく、ハンドルからサドルまで、1本の軸が通っていた。それが前輪と後輪の間に三角形を作っていた。
 脚の短い子供たちは、その三角形の間から足を入れて器用にペダルを漕ぎ " 三角乗り " などと言っていた。
 
 私は、自転車屋からピカピカの自転車を転がしながら、自分の自転車を軽々と進めてゆく父の後を付いて家まで帰ったのだが、それがとても大変だったのを、嬉しさと同時に今でも忘れられない。

 自転車が乗れるようになってからは、自転車を転がして歩くことぐらい、そんなに辛いことはなくなっている。

 その後、あらゆ場面で、初めての経験の大変さと、熟練した後の容易さを知ることになるのだが…。

 ともかく、自転車が我が物になってからは、夕方になると、御飯が出来るまでの間を、父が毎日近くの中学校の校庭に連れて行ってくれて、後ろの荷台を支えてくれ、乗り方を教えてくれた。

 ある日、父がしっかり支えてくれていると信じきっていたから、後にいるはずの父に話しかけたら、返事がない。
 まだ、後など振り向けるほどの余裕はない。
 ふと見ると、校庭を半周した向こう側に父が立っていて、手を叩いているではないか!
 私は突然、どっと不安に襲われてその場で転んでしまった。
 でも、それからはどうにか父を煩わせなくても、一人で練習するようになれた。
 …今…私は生意気を言っているが、こうして育てて貰ったのである。

 
※自転車の荷台を支えてくれている父が居ないと気付き転びぬ



  
by blue-lulubul | 2008-10-28 17:49

平安王朝の女房装束

 平成20年9月10日に
 「群馬県立日本絹の里」へ行ってきました。
[王朝雅の絹文化~華麗なる平安装束~」特別展を見るためです。

 『源氏物語』の光源氏が35歳に落成した、広大な邸宅六条院を四分の一に縮尺して再現してありました。
 当然中に配置されている人物たちの大きさも縮尺した人形です。
 
 ○母屋、南廂、庭 : 『源氏物語』第34帖「若菜上」より 柏木の垣間見
 ○  東 廂 : 椿餅(つばいもち)を用意する女房達
 ○   局  : 女房の日常 ~ 双六に興じる、偏つぎに興じる~
 ○孫廂 、 北廂 : かさねの色目 ~春夏秋冬~
 ○  西 廂 : 胡蝶(こちょう) 、迦陵頻(かりょうびん)

 華麗で、見事でした。想像力も良いですが、目に訴えるということ、特に色彩のインパクトには改めて感嘆させられます。
 まさに「百聞は一見に如かず」だと思わせられました。

 見学者が少なかったので、女房装束を試着させていただきました。

 かの源 典侍(げんのないしのすけ)に光源氏が送った文を思い出して、
自虐の念にとらわれました。
 
 「あさましゅう、古りがたくも今めくかな」(あきれたものよ、年甲斐もなく若い者のようなことをすることだ)と…。

 
※「若すぎる」「歳とりすぎた」言い訳はいくらもありて晩秋にいる 







 
by blue-lulubul | 2008-10-27 11:51

齧(かじ)る

 かつて知人がプレリー・ドッグを飼っていた。
 (リス科、プレリー・ドッグ属、哺乳類)の仲間である。
 犬でもないのに、ドッグとは、「集団で生活しているので、仲間同士が鳴き声で連絡し合い、その鳴き声がイヌに似ていることから付いたという。
 ペットとして単独に人間に飼われたプレリー・ドッグは、人に良くなつき頭も良い。

 ある日、知人が外出から帰り玄関の鍵を開けてドアを開いたら、鉄格子の檻のなかにいるはずのプレリー・ドッグが迎えに出ていたという。
 驚いて調べたら、鉤の手に曲がっている、魔法使いのような長い爪で器用に鍵を外したらしい。
 そして…、押入れの中へ入ったらしく布団の下の床とか、四隅の柱が、みごとに齧られてあったという。
 リスを飼っていた人も、家具の裏側へ入って一晩中ガリガリ音がしていたと聞いたことがあった。
 彼らの持つあの鋭い前歯は、いつも私を不安にさせる。
 もし、地球がどうにか?なったとしても、最後まで生き残るのは彼等だと思ってしまうほどである。

※齧歯類(げっしるい)闇を丸めてかじりいるやがて地球の傾くまでを
by blue-lulubul | 2008-10-26 17:21

透けてゆく白月

白(しら)月が青空に透けている

その下で、桜がハラハラ風に舞っている

まるで、白月が、わが身を削って散らしたようだ

桜はふぶき続ける

月は、なおも透きとおって…

ほのかに、ほのかに、青空にまぎれてしまう

ひとしきり風とのロンドを繰り返していた花びらは、

月が青空とすっかり同化してしまうと、

ピタリと散るのをやめてしまった

やっぱり、そうだった!

桜吹雪は月自身のかけらが散っていたのだ


※さくら散るちるちるみちる花陰に今日ひと日君はわがものと居よ






 
by blue-lulubul | 2008-10-25 17:39
 「ミッシング・リンク」という語がある。
 (失われた環)という意味で、生物の系統進化において、現世生物と、既知の化石生物との間を繋ぐべき未発見の化石生物のことで、これが、発見されると進化の系列が繋がるというもの。

 2008年10月23日(木)付の毎日新聞に「鳥寸前のしっぽ恐竜の新種の化石が発見された」との記事が、想像図と共に掲載された。
 これは、鳥の進化を果す直前の「ミッシング・リンク」に当たるとある。

 「中国モンゴル自治区のジュラ紀中期~後期(1億6800万年~1億5200万年前)の地層から発見された」のだという。
 気の遠くなるような進化の歴史に思わず身震いする。

 全身がハト位の大きさなのに、18,5センチほどの長い4本の尾羽を持っているという。想像図には雉の雄鶏のように美しい尾羽が描かれている。
 全身羽毛に覆われているのに、翼の痕跡がないので、飛べなかったらしい。
 鳥になる前の恐竜の化石には、前脚と後脚に翼があり、グライダーのように滑空していた化石もあるのだという。
 だが、今回発見されたものは、翼が無いにもかかわらず、飛んでいたものより、よりいっそう鳥に近い骨格の特徴を持っていたというのだ。この辺りが「ミッシング・リンク」に当たる所以らしい。
 「鳥類に進化する前に飛ぶのをやめた可能性がある」と真鍋 真氏(国立科学博物館研究主幹)が語ったと記事にある。

 クジラも一旦陸へ上がったが、その巨体を支えるには、海の方が暮し易いと、再び海へ戻ったという話だ。
 えらいなあ!生き物は皆、自分の特質に合う生き方を捜して、自主的に選んで頑張って生きているのだ!

 私はかつて、群馬県多野郡中里村の「恐竜センター」へ行った。
 そこで、驚くべき化石と遭遇したことがある。
 「肉食恐竜」と「草食恐竜」が、戦っているままの状態で、化石になっていた。この化石も、外モンゴル砂漠地帯で発見されたものであった。
 モンゴル砂漠地帯は恐竜の宝庫だ!

  小型の肉食恐竜の鋭い鉤状の爪が、大きい草食恐竜の顎に喰い込んで、引きずり倒されたままの状態で、二匹とも化石になっているのである。

 この化石の為の特別展だとは、知らずに入ったので、尚更衝撃的であった 

 一見すると下に組み敷かれている、小さい肉食恐竜の方が負けているようだが、致命傷は無く、被さっている大きな草食恐竜の急所に爪が深く食い込んでいるので、倒れている方が勝ちだと説明があった。

 しかし、長い年月を共に化石となって、共に陽の光の下に曝されているのを見ると、勝ち負けとは、何と空しい一瞬の出来事であることかと思わずにはいられなかった。

※恐竜が絡みあいたる青き化石 嗚呼 絢爛たる虚空の舞踏




















    
by blue-lulubul | 2008-10-24 15:31

瞳の無い眼

 高校時代の私の教室にはモディリアーニの絵の複製が張ってあった。
 どの位の期間貼ってあったか覚えはないのだが、

 妙に生々しい丸みのある体つきの上に長あーい首があって、その首を少しかしげて…。瓜実顔に、瞳の無い灰色の目で私達をいつも見ているという感覚が今でも鮮明に残っている。

 その、瞳の無い眼(まなこ)は恐ろしいほど静かで、まるで湖の底を覗くような感じであった。
 そこから臓器の奥を覗けるような…。
 そこから宇宙の暗闇を覗けるような…。
 そんな感覚を呼び覚まされた。
 
 瞳が無いからこそ、学業をおろそかにしがちな私達の心の奥を見透かされているようで、なんとなく落ち着かなかった。
 どうして、学生時代はあんなに勉強から逃げたかったのだろう?

 今でも思うのだが、あの瞳は埴輪の目とよく似ている。
 埴輪の目も穴が切ってあるだけなのが、非常に深い。非常に魅力的だ。

 長ずるに及んで、ややもすると表面だけの美に心奪われてしまう私を、いつも立ち止まらせたのは、モディリアーニの描いた人物の「瞳の無い眼」であった。
 「落ち着いて心の目で良く見よ!」
 「自分の心で納得した上の美なら、心置きなくその美に酔えば良い!」
 そんなふうに、無意識のうちに考えているらしい。

※容姿のみ見ているわれと向き合える<モディリアーニ>の女瞳は持たぬ
by blue-lulubul | 2008-10-23 14:10

妖として…

ヒナゲシの花畑に少女達の一団
のびのびと振舞う少女たちにはじけるような陽の光が踊る
なんと楽しげなさんざめき!

その中の一人にわたしはひきつけられた

ひじょうに醒めている眼差し
青ざめてみえるほど白い肌
際立った赤い唇

少女に、遥か昔の外(と)つ国の姫さまのおとぎ話が重なる
「目鼻立ちのすずしげな若者に心を奪われてしまった少女は、
毎日彼を見ていたくて、彼の部屋の窓の下でヒナゲシに変わってしまう」

ヒナゲシは
麦の豊作の前兆
収穫の女神ケレスに捧げられた花
花弁が早く落ちてしまうため、枯れる花は無いといわれる
人間が足を踏み入れられる汚されている場所では育たない

ヒナゲシを捧げるのにふさわしいのは、
女王にして狩人・貞節にして美々しいアポロの妹ディアナの方であろう

ギリシャの乙女たちは、
ケシの花びらで恋の心を量るのを常としていたという
「花びらを掌(てのひら)の上に置き強く打った時に大きな音をたてれば、恋人は忠実であり、破けると不実を表した。」
このことから転じて、ケシの葉は「密告者」の異名を持つ

突然!
私は、我に帰る
急に音のない世界に放り込まれたから…

少女は立ち去る時
集団の中から一度だけ振り返って私を見た!
裡(うち)に強い気迫を秘めた、
怒りとも悲しみとも思索とも受け取れる
憂愁の眼差しであった

私はその場でどっと老いていた


※愛した記憶妖として顕(たつ)朱(あけ)いまだ褪(あ)せないままの辻が花裂(きれ)
by blue-lulubul | 2008-10-22 11:51

バスを待つ

夏の強い日差しを貫いている道が、
一切の音を失ったような瞬間がある。

音符に付けるフェルマータを
休止符に付けたドボルザークの心の内を覗いたような…。

人間の身の裡(うち)の宇宙は、
外界のそれより
あるいは深く、広いのかもしれない。

どこへでも行けそうで、
どこにも出られない…
そんな妖しい思いを呼び覚まされる。

動きの止まった
真夏の昼下がりのバス停留所に、
黒色のボディコンのワンピースを着た女性とバスを待つ。

彼女なら、
この固まった空気を揺すってくれるかもしれない。
それとなく見上げると、
帽子の広い鍔(つば)が顔を隠している。

顔が見えなくて…
かえって…
絶世の美女をイメージさせられる。

バスがなかなか来ない。

女性は、ハイヒールのスラリとした脚を動かすこともない。

ふと、青葉がざわめいた。

バスが陽炎(かげろう)の中からやってくる。

終点は「来世」に違いない。


※つば広の夏帽の女と待っている明日香村〈来世行き〉のバス
by blue-lulubul | 2008-10-21 14:23