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2016年 03月 14日 ( 1 )

犠牲者の思いを確(しか)と受け止めて雲の峰仰ぐ伊豆守(いずのかみ)信之                            lulubul

*読み終わって、池波正太郎の人間洞察の途方もない深さに舌を巻いた。
また無駄なことは一切書き込んでなく、この表現しか他にはないと思われるギリギリのところまで削り取った省略は、ある意味度胸がいると思われる。それなのに技巧の跡や作為を一切感じさせないのである。ごく自然な表現で気持ちが良い。 この省略の妙は短歌創作の手本にもなると思われる。

*登場人物の中に、あるいは作者「池波正太郎」がその生き方を理想としているのではないかと、私が感じられる人がいる。それは、滝川一益の孫の「滝川三九郎」である。次の、「川に水が流れるように、おのれの環境に逆らうことなく、それでいて、自分を捨てたことがない三九郎であった」という表現からも察せられる。
滝川三九郎は関ケ原戦の前夜に真田信之の腹違いの妹(於菊)を妻に迎え大阪戦後は真田幸村の二人の娘・「梅」と「あぐり」を養女にした。そして、「梅」を伊達家の家老「片倉小十郎」へ嫁がせ、「あぐり」を伊予(いよ)の松山の城主・松平忠知(ただちか)」の重臣で「蒲生(がもう)源左衛門」の息子の「郷喜(さとよし)」へ嫁がせている。

*この長い小説は、十二巻に分けてあるので、一冊読み終わるごとに私が一番印象に残った個所を短歌にしてみようと思い立ち読み進んできたが、やはり内容をなぞるようで・・、なんだか言わずもがなという体たらくになってしまった。だが、読み終わった後に強く印象に残る言葉があるので、次に引用しておきたい。 lulubul

『(十二)雲の峰』76ページ
「伊豆守信之も(田嶋は、おそらく、角兵衛出生の秘密をわきまえていよう)
感じてはいるが、口には出さぬ。
口に出さなくとも、たがいにたがいの胸の内がわかっている。
この時代の男たちは、このようにして、事を運び生きていたのだ。
また、それほどに言葉というものを大切にしたのだともいえよう。
胸の内の思いを口にだしてしまうと、そこに微妙な変化が起こる。
かえって双方の真実が、つたわらなくなってしまうこともある。
言葉というものは、便利のようでいて、不便なものでもあるのだ。

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by blue-lulubul | 2016-03-14 15:03