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主に短歌


by るるぶる
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短歌作品批評Ⅲ

病む母の寝息立てるを見定めて妖しくゆれる桜に逢いに(lulubul)

短歌一首評 lulubul

音の無き病院の廊下を歩みゆく足裏に生き物きているような (isikawahiro)

 揺らぎのある詩情を詠うのに適した三句切れの歌であるが、内容は重い。
 先ず、二句までの「音の無き病院の廊下」とは、消灯時間を過ぎて患者達の寝静まった病院内の廊下であろう。作者はそこを静かに歩んでいる。すると、自分の密かな足音でも、いやに大きく響いて感じられるのだ。だから、なお一層注意して歩く。すると、何だか粘っこいものがくっついたような足音になる。そのような現象を作者は「足の裏になにかの生き物がきているようだと」感じたのである。   
作者のこの感覚が、詩人としての特質なのである。   
病を治すことを第一義とするはずの病院であるが、常に付きまとう「死」を思うときこの下の句は、不気味さを増す。
作者の命への凝視を感じさせる一首である。


短歌作品批評Ⅲ_c0177834_10215710.jpg

by blue-lulubul | 2016-04-15 10:24 | 短歌作品批評